残業代対応FAQ

通常の賃金の時間単価の計算方法を教えて下さい。

1 通常の賃金の時間単価の計算方法
 通常の賃金の時間単価を計算する際、「固定給」、「歩合給」といった大雑把な分類で考えるのではなく、それが(1)時間によって定められた賃金なのか、(2)日によって定められた賃金なのか、(3)月によって定められた賃金なのか、(4)出来高払制によって定められた賃金なのかを明確に区別して計算する必要があります。
 具体的な計算方法は、次のとおりです。

(1) 時間によって定められた賃金
 時給が、通常の賃金の時間単価となります。
 時給1,000円であれば、通常の賃金の時間単価は1,000円/時となります。

(2) 日によって定められた賃金
 所定労働日数が日によって異ならない場合、日給を1日の所定労働時間数で除した金額が通常の賃金の時間単価となります。
 日給12,000円で1日の所定労働時間数が8時間であれば、通常の賃金の時間単価は12,000円÷8時間=1,500円/時となります。

(3) 月によって定められた賃金
 月によって所定労働時間数が異ならない場合は、月給を一月の所定労働時間数で除した金額が通常の賃金の時間単価となります。
 月によって所定労働時間数が異なる場合は、月給を一月平均所定労働時間で除した金額が、通常の賃金の時間単価となります。
 月によって所定労働時間数が異なる会社において、月給が260,000円で一月平均所定労働時間数が160時間であれば、通常の賃金の時間単価は260,000円÷160時間=1,625円/時となります。

(4) 出来高払制によって定められた賃金
 その賃金計算期間における歩合給額を総労働時間で除した金額が、通常の賃金の時間単価となります。
 歩合給が80,000円、総労働時間が200時間の場合、通常の賃金の時間単価は、80,000円÷200時間=400円/時となります。

(5) 定め方が異なる賃金が複数ある場合
 それぞれ算定した時間単価を合計した金額が、通常の賃金の時間単価となります。
 日によって定められた賃金の時間単価が1,000円/時、月によって定められた時間単価が300円/時であれば、通常の賃金の時間単価は1,000円/時+300円/時=1,300円/時となります。
 ただし、歩合給(出来高払)に関する時間外・休日割増賃金は、時給・日給・月給等の場合とは異なり、割増部分のみ(25%部分等)を支払うものであるため、時給・日給・月給等とは別枠で通常の賃金の時間単価を計算するのが一般的です。

2 除外賃金
 原則として全ての賃金が残業代計算の基礎となりますが、次の(1)除外賃金、(2)残業代は例外的に残業代計算の基礎から除外できます。

(1) 除外賃金
 除外賃金とは、労基法37条5項・労基法施行規則21条で限定列挙されている家族手当、通勤手当、別居手当、子女教育手当、住宅手当、臨時に支払われた賃金、1か月を超える期間ごとに支払われる賃金等の労働の内容や量と無関係な労働者の個人的事情で変わってくる賃金手当です。
 除外賃金に該当するかは、名目のみにとらわれず、その実質に着目して判断されます(昭和22年9月13日基発17号)ので、名称が「家族手当」「住宅手当」といった名目で支給していたとしても、除外賃金に当たるとは限りません。
 除外賃金としての性質を有する「家族手当」とは、「扶養家族数又はこれを基礎とする家族手当額を基準として算出する手当」のことをいい、たとえその名称が物価手当、生活手当等であっても「扶養家族数又はこれを基礎とする家族手当額を基準として算出する手当」であれば「家族手当」に該当します。他方で、「家族手当」という名称であっても扶養家族数に関係なく一律に支給されている場合や、一家を扶養する者に対し基本給に応じて支払われる手当などは、除外賃金としての性質を有する「家族手当」とは認められず、残業代算定の基礎賃金に入れるべきこととなります。
 除外賃金としての性質を有する「通勤手当」とは、「労働者の通勤距離又は通勤に要する実際費用に応じて算定される手当」をいい通勤に必要な実費に対して支給される通勤手当であれば除外賃金に該当しますが、通勤距離や通勤に要する実費とは関係なく一律に支給される通勤手当等は、除外賃金としての性質を有する「通勤手当」には該当せず、残業代算定の基礎賃金に入れるべきこととなります。
 除外賃金としての性質を有する「住宅手当」とは、住宅に要する費用に応じて算定される手当のことをいいます。したがって、全社員に一律に定額で支給しているような場合は、除外賃金としての性質を有する「住宅手当」には該当せず、残業代算定の基礎賃金に入れるべきこととなります。
 労基法で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については無効となり、無効となった部分は労基法で定める基準によることになりますので、除外賃金に当たらない手当が存在するにもかかわらず労働契約書で基本給のみを残業代算定の基礎賃金とする旨定めて合意するなどしても当該合意は無効となり、基本給以外の除外賃金に当たらない手当についても残業代算定の基礎に加える必要があります。
 また、労基法違反の終業規則は、違反している部分に関しては労働契約の内容とはならず労基法が適用されますので、除外賃金に当たらない手当が存在するにもかかわらず賃金規程などで基本給のみを残業代算定の基礎とする旨定めて周知させるなどしても、当該規定は労働契約の内容とはならず、基本給以外の除外賃金に当たらない手当についても残業代算定の基礎に加える必要があることになります。

(2) 残業代
 残業代として基礎賃金から除外されるかについても、名目のみにとらわれず、その実質に着目して判断すべきと考えるのが素直であり、残業代として基礎賃金から除外されるためには、残業代としての実質を有している必要があります。
 残業代の名目で、あるいは賃金規程などで残業代の趣旨で支給する旨規定した上で賃金を支払っていたとしても、残業代としての実質を有していなければ、残業代として基礎賃金から除外されませんが、このことは残業代として基礎賃金から除外されるかどうかと残業代の名目が関係ないということを意味するわけではありません。「営業手当」など、その名目からは残業代とは推認できないものについては、賃金規程に当該手当が残業代である旨明記して周知させたり労働契約書にその旨明示して同意したりしておかなければ残業代として基礎賃金から除外されないのが通常ですし、残業代の実質を有しないと判断されるリスクが高くなりやすいので、残業代の名目は、「時間外勤務手当」等、残業代であることを推認させる名目とすることが望ましいところです。
 労基法37条の定める割増賃金として残業代計算の基礎賃金から除外されるためには、通常の賃金に当たる部分と労基法37条の定める割増賃金に当たる部分とを判別することができなければなりません。