残業代対応FAQ

固定残業代(みなし残業)とはどのような制度ですか?

 会社経営者が「固定残業代(みなし残業)を導入すれば、残業代を稼ぐために残業する社員が減るから、無駄な残業を抑制することができる。」と考えることは、珍しくありません。この考えの根底には、残業するかどうかを決めるのは社員であるとの誤解や、社員は残業代目的で無駄な残業をしているという発送があります。残業させるかどうかを決めるのは雇い主の仕事であり、残業している社員が決めることではありません。社員が残業した場合に残業代を稼げることは、雇い主が社員に残業させた結果に過ぎず、社員が選択して獲得した結果ではないのです。社員に対し一定の時間断りなく残業する裁量を与えることはありますが、残業の裁量を与えたこと自体が雇い主の判断ですし、雇い主に労働時間を把握する義務があることに変わりありません。
 また、労基法27条が時間外労働などした場合に雇い主に残業代の支払を義務付けている趣旨は、雇い主に残業代を支払わせることによって、時間外労働時間等を抑制し、労働時間に関する同法の規定を遵守させるとともに、労働者への補償を行おうとする趣旨によるものです。「残業すれば残業代がもらえるから無駄な残業が増えてしまう。残業してもしなくてももらえる残業代が変わらないようにすれば、無駄な残業を抑制できるだろう」という発想は、最高裁判決が判示している労基法37条の趣旨に反する発想と言わざるを得ません(医療法人社団康心会事件最高裁平成29年7月7日第二小法廷判決)。このような発想が成り立つのは、労働時間管理が適切になされておらず、残業する社員が残業するかどうかを決めている実態の会社くらいなのではないかと思います。
 雇い主に残業させるかどうかを決める権限があるのであり、労働者に残業するかどうかを決める権限はないのですから、本来であれば、「固定残業代(みなし残業)を導入すれば、残業代を稼ぐために残業する社員が減るから、無駄な残業を抑制することができる。」という結果にはならないはずです。