割増賃金は、「通常の賃金の時間単価×時間外・休日・深夜労働時間数×割増率」で計算します。
要約すると、各割増賃金の計算は次のようになります。
時間外割増賃金=時間外割増賃金の時間単価×時間外労働時間数
休日割増賃金=休日割増賃金の時間単価×休日労働時間数
深夜割増賃金=深夜割増賃金の時間単価×深夜労働時間数
割増賃金の計算式から、割増賃金額は、時間外・休日・深夜の労働時間数と比例することが分かります。
固定残業代(みなし残業)を導入した場合、固定残業代額に達するまでは、現実に支払われる割増賃金額と、時間外・休日・深夜労働時間数との間の比例関係が切断され、支払われるべき割増賃金額が固定残業代額を超えた時点で比例関係が復活します。
固定残業代(みなし残業)は除外賃金には該当しませんが、残業代を基礎に残業代を計算しなければならないのはおかしいですから、割増賃金の実質を有する固定残業代(みなし残業)は、割増賃金の算定基礎から除外されることになります。
また、固定残業代(みなし残業)が割増賃金と認められた場合、割増賃金の支払がなされたという弁済の効果も生じます。
固定残業代(みなし残業)の特徴は、割増賃金算定の基礎賃金から除外されること、割増賃金の弁済として認められることが強調されるのが一般的ですが、固定残業代(みなし残業)が割増賃金の支払として認められるかどうかの判断に当たっては、時間外・休日・深夜割増賃金は、原則として、時間外・休日・深夜労働時間数に比例して支払われることが想定されているのに対し、固定残業代(みなし残業)を導入した場合、固定残業代額に達するまでは現実に支払われる割増賃金と時間外・休日・深夜労働時間数との間の比例関係が切断され、支払われるべき割増賃金が固定残業代額を超えて初めて比例関係が復活するという固定残業代(みなし残業)の特徴の理解が重要となります。
原則的な計算方法との乖離の程度、比例関係切断の程度が小さい固定残業代(みなし残業)であれば割増賃金の支払として認められやすいですが、乖離の程度、比例関係切断の程度が大きければ大きいほど、割増賃金の支払とは認められにくくなります。