残業代対応FAQ

固定残業代(みなし残業)を導入すれば残業代を抑制することができますか?

 賃金の内訳を変更するにあたり、固定残業代(みなし残業)を導入して手取り額が減らないようにすれば、書面での同意が得やすく、事実上、紛争が起きにくくなります。
 例えば、基本給280,000円(残業代込みのつもりだが判別可能性なし)としていたものを、基本給230,000円、固定残業代(みなし残業)51,330円(時間外労働30時間分)、合計281,330円に変更したとします。この場合、手取り額が増えているのですから、社員の同意が得やすく、問題ないように思えます。しかし、この事例では、通常の賃金である基本給が280,000円から250,000円に減額されており、労働条件の不利益変更となります。従来の基本給280,000円のまま25時間分の時間外割増賃金を支払おうとすれば、合計332,075円を超える賃金を支払わなければならなかった可能性が高いです。
 訴訟等で賃金内訳変更の効力が争われた場合、当該変更を受け入れる旨の労働者の行為があるだけでは足りず、労働者の自由な意思に基づいてなされたものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在する必要があります。また、労働者の同意がない場合に就業規則の変更で賃金を減額しようとした場合、就業規則の不利益変更が有効となるためには、作成又は変更された就業規則の条項が、そのような不利益を労働者に法的に受忍させることを許容することができるだけの高度の必要性に基づいた合理的な内容のものである必要があります。
 固定残業代(みなし残業)を導入する際に、基本給等の通常の賃金を減額することはハードルが高いと言わざるを得ませんが、実務対応としては、労働者に十分な情報提供・説明を行い、経過措置や代償措置を講じる等して、納得してもらった上で同意書を取得するようにすれば、訴訟リスクを相当程度下げることができるものと考えます。