残業代・弁護士

残業代弁護士|会社経営者のための残業代請求対応 予想外の残業代を請求されたら,労働問題専門弁護士にご相談ください。

予想外の残業代請求を受けてお困りではありませんか?

  • 残業代請求の労働審判や訴訟を起こされた。
  • 従業員が労働組合に加入し団体交渉で残業代を請求してきた。
  • 労基署から残業代不払で是正勧告を受けた。
  • 会社に迷惑ばかりかけていた問題社員が退職後に残業代を請求してきた。
  • 無駄に会社に残っていた社員が残業代を請求してきた。
  • 管理職なのに残業代を請求してきた。
  • 個人事業主なのに残業代を請求してきた。
  • 請求されている残業代の額が妥当な金額かどうか判断することができない。
  • 予想外の残業代請求を受けないようにするために賃金制度を見直したい。
  • 真面目に働いている従業員が残業代の支払について不公平感を抱かないような労務管理をしたい。
  • 顧問弁護士が労働問題に詳しくないため、残業代請求対応の経験豊富な弁護士を探している。
  • 顧問税理士や顧問社労士しか相談相手がおらず,実際に労働審判や労働訴訟の対応をしたことがある専門家がいない。

残業代請求対応 3つのポイント

  • 未払残業代見込額の算定

     残業代請求を受けた場合に必ずしなければならないのは,未払残業代見込額の算定です。なぜなら,未払残業代見込額が分からなければ,残業代を支払う必要があるのか,残業代を支払う必要があるとして何円支払う義務があるのか,どれだけ強気の交渉をすることができるのかといった判断ができないからです。
     明らかに未払残業代がない事案では,時間や労力を惜しんで,安易に和解金を支払うべきではありません。なぜなら,何の根拠がなくても,残業代を請求しさえすればお金が取れる会社であることを認めることになり,モラルハザードが生じかねないからです。
     未払残業代が発生している場合には,いつ,いくら支払うのかについての検討が必要です。間近い時期に和解,調停が成立する見込みがあるのであれば,会社の言い分をしっかり主張立証した上で,和解,調停が成立してから,合意した金額を支払えば足りるでしょう。他方,当面は和解,調停が成立する見込みがない場合は,会社が算定した未払残業代額見込額を早期に支払うことにより,遅延損害金の発生や付加金の支払を予防することを検討することになります。
  • 他の社員への波及防止

     残業代請求を受けた場合に一番怖いのは,大勢の社員から追加の残業代請求を受けることです。残業代請求してきた社員は,他の社員に残業代請求するよう促すとともに,自分の成果を誇示することがとても多いのです。残業代なんて興味がないような態度を取っていた社員であっても,例えば300万円も残業代を会社から取った社員がいるのだと分かった途端,手のひらを返したように,自分も残業代請求をしてみようかと考えるようになることは決して珍しいことではありません。5人の社員に合計1500万円の残業代を支払わなければならなくなったとしたら会社にとって相当な痛手となることは間違いありませんし,零細企業であれば会社が潰れてしまうかもしれません。
     他の社員への波及を防止するためには,1人から残業代請求を受けたら直ちに,賃金制度・労務管理の在り方を見直す必要があります。残業代請求を受け,多額の和解金を支払っておきながら,既存の賃金制度・労務管理をほとんど改めないでいたところ,今度は4人,5人といった大勢の社員から残業代請求を受けて窮地に追いやられるケースが本当に多いのです。
  • 経営者側労働問題専門弁護士への相談

     残業代請求を受けた場合に早期に経営者側労働問題専門弁護士に相談ことは極めて重要です。
     残業代請求を受けるような事案では前提となる事実の認定や法的解釈が難しいものが多く,訴訟対応を含む残業代請求対応の経験が豊富な弁護士でないと,未払残業代見込額を算定するのが困難です。未払残業代見込額を算定することができないと,とりあえず会社に有利なことを主張してみて,相手の出方や裁判官の様子を見てから最終対応を決めるといった行き当たりばったりの対応になってしまい,強気に主張していいところか,早めに引いた方がいいところか,的確な判断をすることができません。その結果,判決で勝負することがギャンブルのようになってしまうため踏み込んだ勝負ができず,会社に不当に不利な内容で和解・調停をまとめざるを得なくなりかねません。
     他の社員への波及防止は,その金額の大きさからして,会社経営に与える影響の程度としては,個別の労働審判・労働訴訟・団体交渉よりもむしろ重要とさえ言えるものです。個別案件の対応以上に,経験豊富な弁護士に依頼する必要性が高いと言えるでしょう。

 解決事例

弁護士法人四谷麹町法律事務所が解決した残業代請求対応事例の一部をご紹介します。

  • Case1運送会社

    労働審判で約220万円請求 → 50万円で調停成立(77%減額)

     ドライバー業務に従事していた労働者が,退職後,未払残業代がある等として,未払残業代約220万円及び付加金約160万円,合計約380万円を請求する労働審判を申し立ててきました。
     当事務所は会社の代理人として,会社が複数の手当を残業代の趣旨で支給していたこと,労働者側が除外賃金とすべき複数の手当を基礎賃金に含めて計算していること,休憩を現実に取得していたにも関わらず休憩を0時間として計算していること等を指摘し,労働時間及び未払残業代を計算し直し,未払賃金は数万円である旨を主張しました。
     第1回期日において,労働審判官は,残業代の趣旨で支給していた手当については既払残業代であると認め,除外賃金については,複数の計算方法で金額を確認した上で検討していくことになりました。
     第2回期日において,労働審判委員会は,労働者側の請求額を大きく下回る50万円での解決を提案し,会社側はこれを受け入れ,調停が成立しました。

  • Case2Web制作会社

    通知書で約540万円請求 → 約90万円で和解(83%減額)

     退職した労働者の代理人弁護士が,会社に対し,当該労働者は所定始業時刻前から労働していたとか,休憩も取っていないことが多かったとか,残業代も一部しか支払われなかった等の理由から未払残業代540万円を請求する旨の通知書を内容証明で送ってきました。
     当事務所は会社の代理人として,労働者代理人に対し,変形労働時間制を採用していること,所定始業時刻前については業務に従事するよう指示していないため労働時間と評価することはできないこと,休憩時間については一定の時間を現実に取得させていたこと,複数の手当を残業代の趣旨で支給していたこと等を主張し,当事務所が計算し直した未払残業代約90万円であれば和解に応じる旨回答しました。
     労働者側は,当事務所が提示した金額に応じ,請求金額を大きく下回る金額で和解が成立しました。

  • Case3不動産会社

    労働審判で約1660万円請求 → 200万円で解決(88%減額)

     不動産会社に勤務していた元従業員が,ほぼ毎日,早朝から深夜まで働かされ,残業代も支払われていなかったとして,会社に対し,約1660万円の残業代及び約1050万円の付加金,合計約2710万円を請求する労働審判を申し立ててきました。
     当事務所は会社側の代理人として,当該労働者が管理監督者に該当していたことや,深夜割増賃金を支給していたこと等から,未払残業代は存在しないと主張しました。
     労働審判期日において労働審判委員会から調停案が出されましたが,会社側は調停に応じず,第3回期日において,会社が当該労働者に解決金200万円を支払う旨の労働審判がなされました。会社側は,労働審判の内容に納得できない部分はあったものの,解決金額が労働者側の請求額を大きく下回っていたこと,早期に解決したかったことから,労働審判に異議を申し立てず,本件を解決することにしました。

  • Case4運送会社

    労働審判で約840万円請求 → 350万円で調停成立(58%減額)

     運搬業務に従事していた労働者が,退職後,長時間労働をしたにもかかわらず残業代を全く支払ってもらえなかったと主張し,会社に対し,残業代約840万円,付加金700万円,合計約1540万円を請求してきました。
     当事務所は会社の代理人として,複数の手当を残業代の趣旨で支払っていたことを主張し,タコグラフを基に労働時間を計算し,算出された残業代から既払いの残業代を差し引いた金額を裁判所に提示しました。また,労働審判手続において付加金の支払を命じる余地がないことや,除斥期間が経過している分については付加金の支払を命じることができないことも併せて主張しました。
     労働審判委員会は,調停条項に,労働者側に複数の手当が残業代の対価であることを認めさせる内容を盛り込み,労働者側の請求額を大きく下回る350万円での解決を提案しました。会社側はこれを受け入れ,第3回労働審判期日において調停が成立しました。

  • Case5不動産会社

    訴訟で約1160万円請求 → 230万円で和解(80%減額)

     不動産会社を退職した3名が,弁護士を立てて,残業代が支払われなかったとか,基本給だと思っていた金額の一部が非課税交通費とされていたとか,休憩を取れていなかった等と主張し,会社に対し,未払賃金580万円及び付加金580万円,合計1160万円を請求する訴訟を起こしてきました。
     当事務所は会社の代理人として,会社は原告らとは委託業務契約を締結していたのであり原告らが労働者ではないこと,会社から支給していたのは自営業者に対する報酬であり基本給ではないこと等を主張し,未払賃金の請求は認められない旨主張しました。
     訴訟期日を重ねたものの,原告らと会社の見解に隔たりがあったため,裁判官から,3人に対し,合計230万円の解決金を支払う内容での和解を提案されました。会社側は,納得できない部分はあったものの,解決金が請求額の約5分の1の金額であることと,早期解決を希望していたことから,裁判官の提案に応じ,第7回期日において和解を成立させました。

  • Case6運送会社

    労働審判で約740万円請求 → 300万円で調停成立(60%減額)

     ダンプカー運転手としての業務に従事していた労働者が,退職後,長時間の残業をしてきたにもかかわらず一度も残業代を払ってもらっていない等と主張し,会社に対し,未払残業代約740万円を請求する労働審判を申し立ててきました。
     当事務所は会社側代理人として,タコグラフを基に労働時間を計算し,労働者側が労働時間を水増ししていることや,取得していたはずの休憩時間が労働時間として計算されていること,残業代を「残業手当」等の名目で支給していたこと等を主張しました。
     労働審判委員会は,調停条項に,労働者側に残業手当等が残業代の対価であることを認めさせる内容を盛り込み,労働者側の請求額を大きく下回る300万円での解決を提案しました。会社側はこれを受け入れ,第3回労働審判期日において調停が成立しました。

弁護士紹介

弁護士紹介

代表弁護士 藤田進太郎

 予想外の残業代請求を受けたら,誰だって困惑しますよね。しかも,会社に対する貢献度が高い社員からではなく,会社に迷惑をかけて辞めたような問題社員から残業代請求がなされたのであればなおさらです。このような問題社員に対し多額の残業代を支払う結果になったら,会社のために頑張って働いている社員に不公平感が蔓延してしまいかねません。
 会社経営者は,残業代請求をした一部の社員のことだけ考えればいいというものではなく,会社のために働いてくれている社員全員のことを考えてあげなければなりません。賃金原資が限られている中,社員全員が会社に対する貢献度に応じた賃金を得られるようにするのが,正義に適っていることは明らかです。
 弁護士法人四谷麹町法律事務所は,残業代請求を受けた会社の経営者から数多くの相談を受け,労働審判,労働訴訟,団体交渉の対応に当たってきました。会社のために頑張ってくれている社員が不公平感を抱かないよう,社員全員が会社に対する貢献度に応じた賃金を得られるようにするための賃金制度の構築,労務管理にも数多く関わっています。
 残業代を請求する労働審判,労働訴訟,団体交渉等の対応は,弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談下さい。

代表弁護士 藤田進太郎の経歴・所属等

  • 東京大学法学部卒業
  • 日本弁護士連合会労働法制委員会事務局員・最高裁判所行政局との労働審判制度に関する協議会メンバー
  • 東京三弁護士会労働訴訟等協議会メンバー
  • 第一東京弁護士会労働法制委員会労働契約法部会副部会長
  • 経営法曹会議会員
  • 日本労働法学会会員

取扱業務

  • 解雇・退職勧奨に関する紛争の対応
  • 残業代請求対策・残業代請求の他の従業員への波及防止・労基署対応,残業代請求の対応
  • 問題社員対応
  • 労働審判・労働訴訟・仮処分の対応
  • 団体交渉,労働委員会における不当労働行為救済申立事件・あっせん・調停の対応
  • 長時間労働,過労死,過労自殺問題のコンサルティング,示談交渉,損害賠償請求の対応
  • セクハラ,パワハラ,マタハラ問題のコンサルティング,示談交渉,損害賠償請求の対応

弁護士紹介

弁護士 飯島 潤

  • 早稲田大学法学部卒業
  • 中央大学法科大学院修了
  • 平成26年司法試験合格
  • 平成27年12月最高裁判所司法研修所修了(新68期)
  • 平成28年1月弁護士登録(第一東京弁護士会)・当事務所入所
  • 第一東京弁護士会労働法制委員会特別委員

弁護士紹介

弁護士 別所 佳祐

  • 一橋大学法学部卒業
  • 慶應義塾大学法科大学院終了
  • 平成27年司法試験合格
  • 平成28年12月最高裁判所司法研修所修了(新69期)
  • 平成28年12月弁護士登録(第一東京弁護士会)
  • 平成29年1月当事務所入所

著作・講演

代表弁護士 藤田進太郎の著作と、過去に行いました講演の一部をご紹介します。

著作

講演

  • 「勤務間インターバル制度導入にあたっての留意点(特別インタビュー)」 (日本法令)
  • 「新入社員が気をつけるべき法律問題」 (主催:弁護士法人四谷麹町法律事務所)
  • 「職場を悩ます”困った社員”への対処法」 (主催:日経ビジネス)
  • 「労働審判手続における使用者側代理人としての活動について」 (主催:静岡県弁護士会浜松支部)
  • 「経営者のための労務管理セミナー」 (主催:松本商工会議所)
  • 「定額残業代の適切な運用に向けた対策」 (主催:労働開発研究会)
  • 「「問題社員から会社を守る」セミナー」 (主催:人事サポート)
  • 「問題社員から会社を守る」 (主催:東京経営者協会)
  • 「問題社員で会社を潰さないための心構え」 (主催:マスターマインドビジネスプレゼンテーション)
  • 「管理職の職務と必要知識」 (主催:東京経営者協会)
  • 「労働審判制度創設10周年記念シンポジウム」 (主催:日本弁護士連合会)
  • 「問題社員対応の基礎法律知識と実務」 (主催:新社会システム総合研究所)
  • 「解雇・残業代トラブルの防ぎ方と対応法」 (主催:賃金管理研究所)
  • 「労働問題~問題社員の対処法Q&A~」 (主催:神奈川県司法書士会)
  • 「問題社員対応の実務」 (主催:企業研究会)
  • 「飲食店経営者のための労働問題相談セミナー」 (主催:弁護士法人四谷麹町法律事務所)
  • 「中小企業における労働問題の実務 ~メンタルヘルスの視点を踏まえて~」 (主催:東京司法書士会)
  • 「労務管理における労働法上のグレーゾーンとその対応」 (主催:全国青年社会保険労務士連絡協議会)
  • 「解雇・退職の法律実務」 (主催:新社会システム総合研究所)
  • 「労働審判を申し立てられた場合の具体的対処方法」 (主催:企業研究会)

 FAQよくある質問

未払残業代の計算式を教えてください。

 未払残業代の計算式は,「残業代の時間単価×残業時間数+遅延損害金-既払いの残業代」です。

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残業代の時間単価の計算式を教えて下さい。

1 残業代の時間単価の計算式
 残業代の時間単価は,「通常の労働時間・労働日の賃金の時間単価×割増率」で算定されます。

2 通常の労働時間・労働日の賃金の時間単価
(1) 除外賃金がない場合
① 時給制
 時給制の場合,時給が,通常の労働時間・労働日の賃金の時間単価となります。
 例えば,時給1000円の場合は,1000円/時となります。
② 日給制
 日給制の場合,通常の労働時間・労働日の賃金の時間単価は,日給÷一日の所定労働時間数で算定されます。
 例えば,日給1万円で所定労働時間数が8時間の場合は,1万円÷8時間=1250円/時となります。
③ 月給制
 月給制の場合,通常の労働時間・労働日の賃金の時間単価は,月給÷一年間における一月平均所定労働時間数で算定されます。
 例えば,月給24万円で一年間における一月平均所定労働時間数が160時間の場合は,24万円÷160時間=1500円/時となります。
④ 歩合給
 歩合給の時間単価は,歩合給額÷当該賃金計算期間の総労働時間数で算定されます。
 例えば,歩合給が2万円で,総労働時間数が200時間の場合は,2万円÷200時間=100円/時となります。

(2) 除外賃金がある場合
 除外賃金とは,家族手当,通勤手当,別居手当,子女教育手当,住宅手当,臨時に支払われた賃金,1か月を超える期間ごとに支払われる賃金など,労働の内容や量と無関係な労働者の個人的事情で変わってくる賃金手当をいい,残業代計算の基礎には算入しません。
 例えば,月給24万円のうち,4万円が除外賃金に該当する家族手当,通勤手当等の場合,一年間における一月平均所定労働時間数が160時間であれば,通常の労働時間・労働日の賃金の時間単価は,次のように計算します。
(24万円-4万円)÷160時間=20万円÷160時間=1250円/時
 なお,扶養家族数に応じて支給される家族手当,通勤に必要な実費に対応して支給される通勤手当等であれば,除外賃金に該当しますが,扶養家族数とは関係なく一律に支給される家族手当,通勤距離や通勤に要する実費等とは関係なく一律に支給される通勤手当等は除外賃金には該当しませんので,残業代算定の基礎となる賃金に算入する必要があります。

(3) 残業代の取扱い
 残業代の実質を有する賃金については,これを残業代計算の基礎賃金に算入すると趣旨が重複するため,残業代計算の基礎賃金には算入しません。
 「時間外勤務手当」「休日勤務手当」「深夜勤務手当」等の残業代の趣旨で支払われたと推認できる名目で支払われた賃金については,通常は残業代として取り扱われ,残業代計算の基礎賃金には算入されません。定額残業代について,残業代(残業の対価)としての実質を有しているかどうかが問題となることがある程度です。
 他方,「営業手当」等,その名目から割増賃金あるとは推認できないものについては,賃金規程に当該手当が割増賃金である旨明記して周知させたり,労働契約書にその旨明示して合意したりしておかなければ,残業代として取り扱われず,基礎賃金に算入されます。就業規則や労働契約書に明記していた場合であっても,残業代(残業の対価)としての実質を有しないと判断された場合には,基礎賃金に算入されます。残業代の名目は,「時間外勤務手当」「休日勤務手当」「深夜勤務手当」等,名称自体から残業代であることを推認することができる名目とすることが望ましいといえます。

3 割増率
 残業代の割増率は,残業した時間帯によって異なります。
(1) 時間外割増賃金:25%(月60時間を超える時間外労働時間については中小企業を除き50%)
(2) 休日割増賃金:35%
(3) 深夜割増賃金:25%
 なお,労基法を超える割増率を就業規則等で定めた場合は,就業規則等で定められた割増率が適用されます。

4 残業代の時間単価
(1) 時給・日給・月給
 通常の労働時間・労働日の賃金の時間単価が1500円/時であれば,残業代の時間単価は以下のとおりとなります。
① 時間外割増賃金の時間単価=1500円/時×1.25=1875円/時
 60時間を超える時間外労働時間については中小企業を除き1500円/時×1.5=2250円/時
② 休日割増賃金の時間単価=1500円/時×1.35=2025円/時
③ 深夜割増賃金の時間単価=1500円/時×0.25=375円/時

(2) 歩合給
 歩合給部分の残業代の時間単価は,割増部分だけで計算した後,時給・日給・月給に関する残業代の時間単価と合算します。歩合給分の通常の労働時間・労働日の時間単価が100円/時であれば,歩合給部分の残業代の時間単価は以下のとおりとなります。
① 時間外割増賃金の時間単価=100円/時×0.25=25円/時
 60時間を超える時間外労働時間については,中小企業を除き100円/時×0.5=50円/時
② 休日割増賃金の時間単価=100円/時×0.35=35円/時
③ 深夜割増賃金の時間単価=100円/時×0.25=25円/時

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残業時間数の算定方法を教えて下さい。

1 残業時間の種類
 残業時間には,①時間外労働時間,②休日労働時間,③深夜労働時間の3種類があります。

2 時間外労働時間
(1) 基本的考え方
 時間外労働時間とは,労基法32条の規制を超えて労働させた時間のことをいい,週40時間,1日8時間を超えて労働させた時間は,原則として時間外労働時間に該当します。
 1日8時間超の時間外労働時間としてカウントした時間については,週40時間超の時間外労働時間をカウントする際には重複してカウントしません。
 例えば,日曜日が法定休日の企業において,月曜日~土曜日に9時間ずつ労働させた場合,月~木に9時間×4日=36時間労働させているから金曜日に4時間を超えて労働した時間から週40時間超の時間外労働になると考えるのではなく,月~金に1時間×5日=5時間の時間外労働のほか8時間×5日=40時間労働させているから土曜日の勤務を開始した時点から週40時間超の時間外労働となると考えることになります。

 日曜日 法定休日
 月曜日 9時間(時間外労働1時間)←1日8時間超
 火曜日 9時間(時間外労働1時間)←1日8時間超
 水曜日 9時間(時間外労働1時間)←1日8時間超
 木曜日 9時間(時間外労働1時間)←1日8時間超
 金曜日 9時間(時間外労働1時間)←1日8時間超
 土曜日 9時間(時間外労働9時間)←週40時間超

(2) 特例措置対象事業場
 次の事業のうち,常時10人未満の労働者を使用するもの(特例措置対象事業場)については,1週間については44時間,1日については8時間まで労働させることができます。
① 物品の販売,配給,保管若しくは賃貸又は理容の事業
② 映画の映写,演劇その他興行の事業
③ 病者又は虚弱者の治療,看護その他保健衛生の事業
④ 旅館,料理店,飲食店,接客業又は娯楽場の事業
 特例措置対象事業場についても,1日8時間を超えて労働させた場合には時間外労働となりますが,1週間については44時間を超えて労働させて初めて時間外労働となります。
 例えば,日曜日を法定休日として月~土に1日9時間ずつ労働させた場合,土曜日に4時間を超えて労働し始めた時点から週44時間超の時間外労働時間となります。

 日曜日 法定休日
 月曜日 9時間(時間外労働1時間)←1日8時間超
 火曜日 9時間(時間外労働1時間)←1日8時間超
 水曜日 9時間(時間外労働1時間)←1日8時間超
 木曜日 9時間(時間外労働1時間)←1日8時間超
 金曜日 9時間(時間外労働1時間)←1日8時間超
 土曜日 9時間(時間外労働5時間)←週44時間超

(3) 所定労働時間が1日8時間未満の場合
 所定労働時間が1日8時間未満(例えば,7時間)の会社で1日8時間ちょうど働いたような場合,労基法上の時間外労働はしていなくても,所定時間外労働はしていることになります。
 所定時間外労働ではあっても,労基法上の時間外労働ではない時間については,割増ししない通常の時間単価の賃金を支払うのが原則です。但し,就業規則等で所定時間外労働についても割増しした残業代を支払う旨の定め場ある場合には,就業規則の定めによることになります。

3 休日労働時間
 休日労働時間とは,労基法35条の法定休日(原則として1週1休以上)に労働させた時間のことをいいます。
 土日が休日の週休二日制の会社において,日曜日が法定休日の場合,休日である土曜日に労働させた場合であっても,ここでいう休日労働には該当しません。週40時間を超えて労働させた結果,時間外労働に該当する可能性があるにとどまります。

4 深夜労働時間
 深夜労働時間とは,深夜(22時~5時)に労働させた時間のことをいいます。
 昼間の仕事の場合には,深夜労働時間は,時間外労働時間でもあるのが通常です。夜勤の場合は,深夜労働ではあっても,時間外労働ではないこともあります。

5 労働時間数の認定
(1) 労働時間数の認定方法
 労働時間数は原則として,「一日の労働時間の開始時刻から終了時刻までの拘束時間-休憩時間」で,一日ごとに認定されます。

(2) 一日の労働時間の開始時刻・終了時刻・休憩時間の認定
 タイムカード,ICカード等の客観的な記録がある場合は,原則としてタイムカード,ICカード等の客観的な記録を基礎として,一日の労働時間の開始時刻・終了時刻・休憩時間が認定されます。自己申告制を採用し,日報等が存在する場合も,原則として日報等を基礎として一日の労働時間の開始時刻・終了時刻・休憩時間が認定されます。
 ただし,タイムカード,ICカード等の客観的な記録や,自己申告の内容が,実際の一日の労働時間の開始時刻・終了時刻・休憩時間と大きく乖離している場合には,これらを基礎として一日の労働時間の開始時刻・終了時刻・休憩時間を認定することはできません。必要に応じて実態調査を実施し,所要の労働時間の補正をするなどして,適正に実際の一日の労働時間の開始時刻・終了時刻・休憩時間を管理するようにしましょう。
 タイムカード,ICカード等の客観的な記録も,自己申告された日報等も存在しない場合であっても,日記等により一応の労働時間の立証がなされたのに対し会社側が有効な反証ができないと,日記等の証明力の低い証拠だけで労働時間が認定されることがあります。労働時間を水増しした残業代請求がなされても反論できるよう,タイムカード,ICカード等の客観的な記録や日報等を基礎として労働時間を管理しておく必要があります。

(3) 労基法32条の労働時間
 労基法32条の労働時間とは,労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間をいい,労基法32条の労働時間に該当するか否かは,労働者の行為が使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができるか否かにより客観的に定まるものであって,労働契約,就業規則,労働協約等の定めのいかんにより決定されるべきものではありません。
 労働者が,就業を命じられた業務の準備行為等を事業所内において行うことを使用者から義務付けられ,又はこれを余儀なくされたときは,当該行為を所定労働時間外において行うものとされている場合であっても,当該行為は,特段の事情のない限り,使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができ,当該行為に要した時間は,それが社会通念上必要と認められるものである限り,労働基準法上の労働時間に該当します。

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残業代の遅延損害金の利率を教えて下さい。

1 原則
 遅延損害金は,各給料日の翌日から発生します。
 利率は,株式会社,有限会社等の営利を目的とした法人は年6%,社会福祉法人,信用金庫等の営利を目的としない法人は年5%です。

2 退職後の遅延損害金の利率
 退職後の遅延損害金の利率は,年14.6%という高い利率になる可能性があります。
 ただし,「支払が遅滞している賃金の全部又は一部の存否に係る事項に関し,合理的な理由により,裁判所又は労働委員会で争っていること。」等の厚生労働省令で定める事由に該当することを主張立証できた場合には,その事由の存する期間については年14.6%という高い利率の適用はなく,原則の年6%とか年5%の利率が適用されます。

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残業代の支払があったと認められるための注意点を教えて下さい。

 残業代の趣旨で支払われたことが明らかな賃金については,その額の限度では既払いの残業代として控除されます。
 「時間外勤務手当」「休日勤務手当」「深夜勤務手当」等,名称自体から残業代の趣旨で支払われたことが推認できる賃金については,通常は既払いの残業代として控除されます。
 定額残業代については,残業代(残業の対価)としての実質を有しているかどうかが問題となることがある程度です。
 他方,「営業手当」等,その名称自体から残業代の支払であるとは推認できないものについては,賃金規程に当該手当が残業代である旨明記して周知させたり,労働契約書にその旨明示して合意したりしておかなければ,残業代の支払があったと認めてもらえないのが通常であり,残業代(割増賃金)の実質を有しないと判断されるリスクも高くなります。
 残業代は,「時間外勤務手当」「休日勤務手当」「深夜勤務手当」等,名称自体から残業代であることを推認させる名称で支給することが望ましいと考えます。

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残業代の消滅時効期間を教えて下さい。

 残業代の消滅時効期間は各給料日から2年なので,給料日から2年を経過している残業代についてまで請求を受けた場合は,消滅時効の援用を検討する必要があります。
 内容証明郵便等で残業代の請求を受けた場合であっても,6か月以内に労働審判の申立てや訴訟の提起等がなされない場合は,内容証明郵便等による請求は時効中断の効力を生じないので,6か月経過の有無を確認する必要があります。

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付加金とはどのようなものですか。

1 基本的考え方
 使用者が労基法37条に定める残業代の支払を怠り,労働者から訴訟を提起された場合,裁判所は未払残業代に加え,これと同一額の付加金の支払を命じることができます。残業代請求訴訟では,付加金の請求もなされるのが通常です。
 判決では,未払割増賃金と同額の付加金の支払が命じられることが多くあります。ただし,付加金の支払を命じるかどうか,付加金を減額するかどうかは,裁判所の裁量に委ねられていますので,付加金の支払を命じるのが相当でない事情があるのであれば,その事情を主張立証しておくようにしましょう。

2 基本給の未払があった場合に付加金が命じられる可能性
 判決で付加金が命じられるのは,
①解雇予告手当
②休業手当
③残業代(割増賃金)
④年次有給休暇取得時の賃金
の未払があったときです。①~④以外の基本給などの未払があったとしても,付加金を命じられることはありません。

3 判決で付加金の支払を命じるのが相当でない場合の対応
 残業代の支払を怠っていると判決で認定された場合,付加金の支払も命じられることが多いですが,付加金の支払を命じるかどうかは裁判所の裁量に委ねられており,未払残業代の50~80%といった金額の付加金の支払が命じられたり,全く付加金の支払が命じられないこともないわけではありません。
 付加金の支払を命じるのが相当でない事情があったり,付加金を減額すべき事情があるのであれば,その事情を主張立証しておくべきでしょう。

4 労働者代理人弁護士との任意交渉で,未払残業代の他に付加金も払えと要求された場合の対応
 付加金の支払義務は「判決」で付加金の支払を命じられて初めて,発生するものです。単に未払残業代があるというだけでは,付加金を支払う法的根拠が存在しません。
 付加金の支払を命じる確定判決が存在しているのであれば別ですが,労働者代理人弁護士との間の任意交渉で未払残業代のほか付加金も払えと要求されたとしても,その付加金の請求には法的根拠がありませんので,付加金の支払い要求に応じる必要はありません。

5 除斥期間
 付加金の請求は,違反のあったときから2年以内にしなければならないとされています。この期間はいわゆる除斥期間であって,消滅時効期間ではありません。
 除斥期間を遵守するためには,給料日から2年以内に内容証明郵便等で残業代を請求するだけでは足りず,労働審判を提起したり,訴訟を提起したりする必要があります。
 各給料日から2年以内に内容証明郵便等で残業代の請求がなされ,それから6か月以内に訴訟提起がなされているため残業代の消滅時効が中断している場合であっても,付加金の除斥期間は内容証明郵便での請求を受けても影響を受けないため,各給料日から訴え提起まで2年を経過している未払残業代の付加金については,除斥期間を経過しているため,支払を命じることができません。

6 係争中における未払残業代の支払
 付加金は,訴訟における事実審の口頭弁論終結時において労基法37条に定める未払残業代が存在する場合にのみ,判決で支払を命じられる可能性があるものです。労働審判は判決ではないので,付加金の支払を命じる余地はありません。
 訴訟において,事実審の口頭弁論終結時前に未払残業代全額を支払い,その旨の主張立証をした場合は,判決で付加金の支払を命じることはできません。
 第一審判決で付加金の支払を命じられた場合であっても,控訴して判決で支払を命じられた未払残業代全額を確定的に支払い,控訴審の口頭弁論終結時(多くの場合,第1回口頭弁論期日終結時)までにその旨主張立証すれば,控訴審判決が第一審判決より増額された未払残業代を認定しない限り,付加金の支払を回避することができます(控訴審判決が第一審判決より増額された未払残業代を認定した場合は,増額部分について付加金の支払を命じられる可能性はあります。)。

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残業代請求対策をどのような発想で行えばいいのかについて教えて下さい。

1 基本的発想
(1) 未払残業代の計算式から導かれる検討事項
 未払残業代は,「①残業代の時間単価×②残業時間数+③遅延損害金-④既払いの残業代」で算定されますので,残業代請求対策としては,①残業代の時間単価を抑制すること,②残業時間数を抑制すること,③遅延損害金の発生を抑制すること,④発生した残業代を支払うこと等が主な検討事項となります。

(2) 残業代の消滅時効期間は2年
 残業代の消滅時効期間は各給料日から2年です。各給料日から2年を経過している残業代について請求を受けた場合は,消滅時効の援用を検討します。

(3) 残業代を支払わない旨合意しても無効(年俸制など)
 労基法37条で定める残業代の支払は,労基法により強制されており,これに反する個別合意,就業規則,労働協約の定めは無効となります。残業代を支払わない旨の個別合意,就業規則,労働協約は,残業代請求対策にはなりません。
 残業代を支払わない旨の同意を労働者本人から得ていても,年俸制であっても,同業他社より高額の基本給・手当・賞与を支給して,残業に十分に報いていたとしても,労基法37条で定める残業代の支払義務を免れることはできません。「残業代なんて払っていたら,会社経営なんてできない。」などと言って残業代を支払わないでいると,残業代請求を受けるリスクが高くなります。

(4) 管理職≠管理監督者
 労基法上の管理監督者に該当する場合は,労働時間規制の対象から除外されるため,時間外・休日に労働させても時間外・休日割増賃金を支払う義務はなく,深夜労働時間を把握して,深夜割増賃金を支払えば足ります。
 ただし,管理監督者は残業代請求対策のための制度ではありません。単なる管理職というだけでは管理監督者には該当せず,厳格な要件を満たして初めて管理監督者として認められるのが裁判実務での運用です。
 管理監督者は,一般に,「労働条件の決定その他労務管理について,経営者と一体的な立場にある者」をいうとされ,管理監督者であるかどうかは,
① 職務の内容,権限及び責任の程度
② 実際の勤務態様における労働時間の裁量の有無,労働時間管理の程度
③ 待遇の内容,程度
等の要素を総合的に考慮して,判断されます。

(5) 契約形式にかかわらず労基法上の労働者と認定されれば,残業代の支払が必要となることがある
 個人事業主や取締役であっても,労基法が予定する程度の指揮命令下で仕事をさせると,労基法上の労働者と認定され,残業させた場合に残業代の支払が必要となることがある。
 労基法上の労働者に該当するかどうかは,労基法上の労働者性に関する裁判例のほか,昭和60年12月19日付け労働基準法研究会報告「労働基準法の『労働者』の判断基準について」を参考に判断することが多いです。

(6) 定額残業代
 定額残業代が残業代として認められれば,残業代の時間単価を抑制するとともに,未払残業代を減らすことができますが,残業代として認められなければ,定額残業代部分も残業代算定の基礎賃金に加えられて残業代の時間単価が高くなり,残業代の支払としても認められなくなってしまいます。
 定額残業代が残業代として認められるためには,少なくとも,定額残業代が,①残業代(残業の対価)としての実質を有し,②通常の労働時間・労働日の賃金と定額残業代が判別できることが必要です。
 近年,会社側に厳しい裁判所の判断が相次いでいることもあり,定額残業代を採用する場合には,緻密な制度設計が必要となります。

2 残業代の時間単価の抑制
(1) 基本的発想
 残業代の時間単価は,「通常の労働時間・労働日の賃金の時間単価×割増率」で算定されます。したがって,残業代の時間単価を抑制するためには,通常の労働時間・労働日の賃金の時間単価を抑制し,割増率を念頭に置いた労働時間管理を行う必要があります。

(2) 通常の労働時間・労働日の賃金の時間単価の抑制
 通常の労働時間・労働日の賃金の時間単価は,基礎賃金の時間単価であるから,分子の基礎賃金を抑制するか,分母の所定労働時間数等を増やせば,通常の労働時間・労働日の賃金の時間単価は下がります。
 もっとも,単に基礎賃金額を抑制したり,所定労働時間数等を増やしただけでは,労働条件が悪くなり,優秀な人材を採用することが難しくなってしまいます。基礎賃金に含まれない除外賃金や,時間単価が低い歩合給を支給することによって,会社に対する貢献に見合った賃金が支給されるよう工夫する必要があります。

(3) 除外賃金の支給
 除外賃金である家族手当,通勤手当,別居手当,子女教育手当,住宅手当,臨時に支払われた賃金,1か月を超える期間ごとに支払われる賃金は,残業代算定の基礎賃金に含まれません。
 例えば,月々の賃金の一部を家族手当等の除外賃金として支払ったり,月々の賃金額を抑制して賞与として支給する賃金の比率を高める等の工夫が考えられます。
 除外賃金に該当するかどうかは,名称ではなく,実質で判断されますので,除外賃金を支給する場合には,除外賃金の実質を有するものとする必要があります。

(4) 定額残業代の支給
 残業代も基礎賃金には含まれませんので,定額残業代を採用することなどにより基礎賃金を抑制することも考えられます。
 定額残業代は,残業代(残業の対価)としての実質を有していないと基礎賃金に算入されることになりますので,定額残業代で不足額があれば清算する等の配慮が必要です。

(5) 所定労働時間数
 所定労働時間数が多ければ分母が大きくなりますので,残業代の時間単価が下がります。月給制では1日の所定労働時間数や所定労働日数が少ないと,所定労働時間数が少なくなることなどを念頭に置いて,1日の所定労働時間や所定労働日数を設定します。
 また,所定労働日に休暇を取得したとしても,所定労働日数に変更があったわけではありませんので,所定労働時間数には影響しません。休日が労働日ではないのに対し,休暇は労働日ではあるが権利として労働から離れることができる日です。「休暇」という名称を付して休みを取らせたとしても,労働日でない日は休日であって休暇ではありません。

(6) 割増率
 割増率が最も高いのは,中小企業以外については月60時間を超える時間外労働時間の50%ですから,中小企業以外については月60時間を超える時間外労働を抑制することが最も重要です。
 次に割増率が高いのは,休日労働時間の35%ですから,休日労働を抑制する必要性も高くなります。
 深夜労働については,25%の深夜割増賃金を加算することになるのですから,深夜労働はできる限り抑制すべきです。
 時間外労働の割増率は原則として25%ですが,通常の労働時間の賃金よりも時間単価が高くなりますので,月60時間以内の時間外労働であっても,抑制することが望ましいです。

(7) 歩合給の支給
 歩合給の通常の労働時間・労働日の時間単価は,当該賃金計算期間の残業時間を含めた「総労働時間数」を分母として計算される上,割増部分だけ支払えば足りますので,歩合給は固定給と比べて残業代額を抑制しやすいです。
 例えば,一月平均所定労働時間数が160時間であっても,総労働時間数が200時間の賃金計算期間に関し2万円の歩合給を支給する場合は,歩合給部分に関する通常の労働時間・労働日の賃金の時間単価は,以下のとおりとなります。
  2万円÷200時間=100円/時
 しかも,歩合給部分に関する割増賃金の時間単価は割増部分だけなので,歩合給部分に関する時間外・休日・深夜割増賃金の時間単価は以下のとおりとなります。
 時間外割増賃金の時間単価
  100円/時×0.25=25円/時
 60時間を超える時間外労働時間については,中小企業を除き
  100円/時×0.5=50円/時
 休日割増賃金の時間単価
  100円/時×0.35=35円/時
 深夜割増賃金の時間単価
  100円/時×0.25=25円/時

3 残業時間数の抑制
(1) 基本的発想
 残業代請求対策としては,残業時間数の抑制が最も重要です。そのためには無駄な残業をさせないようにする必要があります。
 残業させるかさせないかは,会社が決めるべき問題であり,従業員が決めることではありません。

(2) 無駄な残業をやめさせる
 残業時間数を抑制するためには,無駄な残業をやめさせて帰らせることが最も重要です。残業の必要性をよく調べてみたところ,残業の必要性がないことが判明することは珍しくありません。

(3) 無駄な残業をしていないかを確認する
 労働時間を管理しないことには,無駄な残業をしているかどうかを判断することができません。
 タイムカード,ICカード,日報等を基礎として労働時間を管理し,残業している場合には,本人から残業が必要な理由を聴くなどして,無駄な残業をしていないかを確認する必要があります。
 残業時間数の水増し申告は,無駄な残業をしていないかの確認が適切になされていない会社においてなされることが多いです。タイムカード,日報等の記載からは残業しているように読めるにもかかわらず,残業代を支払うことも,本人から残業が必要な理由を聴くこともせずに放置していたところ,残業代請求を受けて残業代の支払を余儀なくされるといった事案が散見されます。

(4) 事前の制度設計としては,残業命令に基づかない残業であることを理由として残業代の支払義務を免れることができることを期待すべきではない
 残業をしている場合に,残業命令に基づかない残業であることを理由として残業代を支払わなくて済む場面は,残業禁止命令に従わずに残業した場合や,予想外の残業をした場合などに限定されます。
 残業代請求を受けたのに対し,残業命令に基づかない残業であることを理由として残業代の支払を拒むことはあり得ますが,事前の制度設計としては,残業時間数の抑制は無駄な残業をさせないことにより達成すべきものであり,残業命令に基づかない残業であることを理由として残業代の支払義務を免れることができることを期待すべきではありません。

(5) 残業を指示していないのに残業をしている従業員がいることに気付いたら,事情を聴くなどした上で,残業をやめさせて帰宅させるか,残業を続けさせて残業代を支払うかを判断する
 明示の残業命令を出していなくても,部下が残業していることを上司が知りながら放置していた場合は,残業していることが想定することができる時間帯については,黙示の残業命令があったと認定され,会社は残業代の支払義務を負うことが多くあります。
 残業を指示していないのに残業をしている従業員がいることに気付いたら,事情を聴くなどした上で,残業をやめさせて帰宅させるか,残業を続けさせて残業代を支払うかを判断する必要があります。残業していることを知りつつ「早く帰れよ。」と声をかけたくらいでは,黙示の残業命令がなかったと認めてもらえません。

(6) 終業時刻後は,残業する必要がないのに会社に残り続けることを禁止する
 在社時間と労働時間は異なる概念であり,在社していたからといってそれが直ちに労働時間と評価されるものではありません。しかし,現実には,終業時刻後も社員が社内の仕事をするスペースに残っている場合,事実上,使用者の指揮命令下に置かれているものと推定され,有効な反証ができない限り,残業していると評価される可能性が高くなります。終業時刻後は,残業する必要がないのに会社に残り続けることを禁止することが望ましいところです。
 終業時刻後,仕事をせずに会社に残っている時間については,タイムカードを打刻させてから在社を認めるとか,仕事をしていない時間を除外して自己申告させるといった対応も考えられなくはないですが,タイムカード打刻後もサービス残業させられていたとか,実際の残業時間よりも短い残業時間の申告を強制された等と主張されて残業代請求を受けるリスクが生じますので,お勧めできません。

(7) 残業禁止命令
 仕事を切り上げて帰るよう強く促しても指示に従わない場合は,書面で残業禁止命令を出さなければならないこともあります。書面で残業禁止命令を出したにもかかわらず,命令に反して残業した場合は,残業時間として認められないのが原則です。
 残業禁止命令を出したにもかかわらず,残業時間として認められてしまう事案としては,事実上,残業を容認していたような場合や,不当労働行為に当たるような場合くらいです。書面で残業禁止命令を出すくらいのことまでしていれば,無駄な残業は解消することが多いです。

(8) 残業の事前許可制
 残業の事前許可制を採用し,事前許可なく残業することを禁止して,現実に残業させなければ,無駄な残業を抑制することができます。残業の事前許可制を採用した場合に,事前許可なく残業している従業員を見つけたら,現実に残業を止めさせて帰らせるか,許可申請させて残業を許可するか判断する必要があります。
 残業の事前許可制を採用した場合における典型的な失敗事例は,残業の事前許可なく残業しているのをみかけたものの,事前許可がない残業だから残業代を支払わなくてもいいと思い込んで残業を放置していたところ,残業代請求を受けるケースです。事前許可なく残業していることを上司が知りながら放置しているような場合は,黙示の残業命令があったと認定され,残業時間と評価される可能性が高くなります。

(9) 定額残業代
 「残業すれば残業代がもらえて給料が増える仕組みだから,従業員に対し残業するモチベーションを与えることになってしまっている。定額残業代を導入して,残業しても現実に支払われる残業代が増えない仕組みにすれば,残業を抑制することができる。」という考えが存在する。
 確かに,定額残業代の導入により無駄な残業をする従業員が減った職場もあるようですが,残業しても定額残業代以外の残業代が支払われていないような場合には,会社の残業を抑制するモチベーションが希薄となり,かえって残業時間数が増えることは珍しくありません。そういった事案で,残業代請求がなされ,定額残業代が残業代と認められなかった場合は,予想外の残業代の支払を命じられる可能性があります。
 残業させるかさせないかは,会社が決めるべき問題であって,従業員が決めることではないのですから,残業時間数を抑制したければ残業させずに帰せば足ります。定額残業代を導入する目的として,残業時間数の抑制を強調することは適切ではありません。。

(10) 変形労働時間制
 労基法32条の法定労働時間よりも労働時間が多い週・日もあれば,少ない週・日もある場合には,変形労働時間制を採用することによって,時間外労働時間数を抑制することができます。他方,恒常的に法定労働時間を超える残業がある場合には,変形労働時間制を採用しても残業時間数を抑制することはできません。
 変形労働時間制を採用する場合には,労使協定の締結・届出等や,各日の所定労働時間の特定が必要となります。所定の手続を怠った場合は,変形労働時間制は無効となり,原則どおり労基法32条の法定労働時間が適用されます。

(11) 事業場外労働のみなし労働時間制
 営業社員等については,事業場外労働のみなし労働時間制の適用も考えられますが,「労働時間を算定し難いとき」という要件が厳しいため,みなしが認められるかどうかの予測が立てにくいことが多いのが実情です。
 また,事業場外労働のみなし労働時間制が適用される場合であっても,所定労働時間労働したものとみなされるのは,通常は所定労働時間内で仕事が終わる場合のみです。通常は所定労働時間を超えて労働することが必要となる場合については,当該業務の遂行に通常必要とされる時間労働したものとみなされます。営業手当は支払っているものの,所定労働時間労働したものとみなして時間外勤務手当を支払っていなかったところ,当該業務の遂行に通常必要とされる時間は10時間と認定されて,1日あたり2時間分の時間外割増賃金を支払わされるといったリスクもあります。事業場外労働のみなし労働時間制が適用されたとしても,残業時間数の抑制にならないことが多くあります。
 事業場外労働のみなし労働時間制を採用するのであれば,所定労働時間労働したものとみなすのではなく,当該業務の遂行に通常必要とされる時間労働したものとみなして,残業時間に応じた残業代を支払っておくようにしましょう。当該業務の遂行に通常必要とされる時間の認定は困難を伴うことが多いので,過半数労働組合や労働者代表との間で,1日何時間労働したものとみなすのか,労使協定を締結し,労基署に届け出ておくことが望ましいと考えます。

(12) 裁量労働制
 労基法上の裁量労働制には専門業務型裁量労働制と企画業務型裁量労働制の2種類があります。いずれも要件を満たせば,1日の労働時間数がみなされるため,運用次第では残業時間数の抑制につながることがあります。
 いずれも適用対象業務が限定されていること,労基法所定の手続を行わないと効力が生じないことに注意しなければなりません。労基法所定の手続を踏まずに,どれだけ残業するかを従業員本人の裁量に任せているというだけの勤務形態を「裁量労働」と呼んでいる事例が散見されますが,労基法の要件を満たさないものについては何の法的効力も生じません。

4 残業代の支払と遅延損害金等の抑制
(1) 各給料日における残業代の支払
 各給料日に残業代全額を支払っていれば,未払残業代が存在しない以上,遅延損害金も発生しません。残業代の計算を正確に行い,各給料日に残業代全額を支払うことが最も重要です。
 定額残業代を採用することなどにより一定額の残業代を支払っておくことも考えられますが,定額残業代が残業代(残業の対価)としての実質を有していないと判断されると,残業代の支払があったとは認められませんので,定額残業代で不足額があれば清算する等の配慮が必要です。

(2) 残業代の存在を争う「合理的理由」の主張立証
 退職後の遅延損害金の利率は,年14.6%という高い利率になる可能性がありますが,「支払が遅滞している賃金の全部又は一部の存否に係る事項に関し,合理的な理由により,裁判所又は労働委員会で争っていること。」等の厚生労働省令で定める事由に該当することを主張立証できた場合には,その事由の存する期間については年14.6%という高い利率の適用はなく,原則の年6%とか年5%の利率が適用されますので,残業代の存在を争う「合理的理由」があることを立証できるよう準備しておき,訴訟においても主張立証するようにしましょう。
(3) 係争中における未払残業代の支払
 残業代請求が係争中であっても,会社見解に沿った未払残業代や一審判決で支払を命じられた未払残業代を支払うことがあります。
 未払残業代を減らすことにより,以後の遅延損害金の発生を抑制したり,付加金の支払を命じられるリスクを減らしたりすることができます。

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定額残業代(固定残業代)の適切な運用方法とリスク管理について教えてください。

1 最近の定額残業代(固定残業代)をめぐる状況
 最近の定額残業代(固定残業代)をめぐる状況として,形式的には通常の労働時間・労働日の賃金に当たる部分と割増賃金に当たる部分とが判別できるように見える事案であっても,定額残業代が割増賃金としての実質(時間外・休日・深夜労働の対価としての性格)を有するとは認められない場合は,割増賃金の支払がなされているとは認めない裁判例が増えてきています。定額残業代を導入している会社は,単に判別可能性があればよしとするのではなく,定額残業代が割増賃金としての実質を有しているのか,もう一度よく確認しておく必要性が高まっているといえるでしょう。
 また,求人段階における定額残業代のトラブルも増えている印象です。「求人情報にはそれなりの金額の給料がもらえるかように記載されていたので応募して就職してみたら,残業代込みの給料であり,実際の給料は求人情報から読み取れるものよりもはるかに安いことが後から判明した。残業代込みの給料であることが事前に分かっていたら,ほかの企業に就職していたのに。だまされた。」といったトラブルが起きないよう十分に配慮しなければなりません。こうしたトラブルをなくすため,最近,どのような規制がなされているのかという点についても以下で解説していきます。

2 定額残業代(固定残業代)の特徴
(1) 割増賃金の計算(原則)
 割増賃金の計算方法は労基法37条・労基則19条で定められており,「通常の労働時間・労働日の賃金の時間単価×時間外・休日・深夜労働時間数×割増率」です。
 要約すると,各割増賃金の計算式は以下のとおりとなります。
  時間外割増賃金=時間外割増賃金の時間単価×時間外労働時間数
  休日割増賃金=休日割増賃金の時間単価×休日労働時間数
  深夜割増賃金=深夜割増賃金の時間単価×深夜労働時間数
 割増賃金の計算式からは,割増賃金額は,時間外・休日・深夜労働時間数と比例する関係にあることが分かります。

(2) 定額残業代(固定残業代)を導入した場合の割増賃金の計算
 (1)で述べたとおり,時間外・休日・深夜割増賃金は,原則として,時間外・休日・深夜労働時間数に比例して支払われることが想定されています。定額残業代を導入した場合,定額残業代額に達するまでは,現実に支払われる割増賃金額と時間外・休日・深夜労働時間数との間の比例関係が切断され,支払われるべき割増賃金額が定額残業代額を超えた時点で比例関係が復活することになります。
 定額残業代は労基法37条5項,労基則21条各号に限定列挙された除外賃金には該当しませんが,残業代を基礎に残業代を計算しなければならないのはおかしいですから,割増賃金の実質を有する定額残業代は,割増賃金の算定基礎から除外されることになります。
 また,定額残業代が割増賃金と認められた場合,割増賃金の支払がなされたという弁済の効果も生じます。
 定額残業代の特徴としては,割増賃金算定の基礎賃金から除外されることや,割増賃金の弁済として認められることが強調されるのが一般的ですが,定額残業代が割増賃金の支払として認められるかの判断に当たっては,時間外・休日・深夜割増賃金は,原則として,時間外・休日・深夜労働時間数に比例して支払われることが想定されているのに対し,定額残業代を導入した場合,定額残業代額に達するまでは,現実に支払われる割増賃金額と時間外・休日・深夜労働時間数との間の比例関係が切断され,支払われるべき割増賃金額が定額残業代額を超えた時点で初めて比例関係が復活することになるという定額残業代の特徴の理解が重要となってきます。原則的な計算方法との乖離の程度,比例関係切断の程度が小さい定額残業代であれば割増賃金の支払として認められやすいですが,乖離の程度,比例関係切断の程度が大きければ大きいほど,割増賃金の支払とは認められにくくなります。

3 定額残業代(固定残業代)に関する最高裁判例
 高知県観光事件最高裁判決とテックジャパン事件最高裁判決の法廷意見の趣旨からは,以下のようにいえると考えています。
① 時間外・休日・深夜労働が行われたことのみを理由として賃金が増額された場合は,増額された賃金の増額部分については,労基法37条の割増賃金の支払として認められる可能性が高い。
② 時間外・休日・深夜労働がされた場合でも賃金が増額されることはなく,通常の労働時間・労働日の賃金に当たる部分と割増賃金に当たる部分とを判別することもできない場合には,定額残業代の支払によって,労基法37条の割増賃金が支払われたとは認められない。

4 要件の検討
(1) 定額残業代が割増賃金の実質(時間外・休日・深夜労働の対価としての性格)を有していること
 定額残業代が実質的にも割増賃金の性質を有することを要求する裁判例は以前から存在していました。その代表例は,以下の徳島南海タクシー(割増賃金)事件高松高裁平成11年7月19日判決(労判775号15頁)です。本高裁判決に対し,会社側は上告及び上告受理申立をしましたが,最高裁平成11年12月14日第三小法廷決定(労判775号14頁)は上告を棄却し,上告不受理としています。
 「そこで,右賃金体系における時間外・深夜割増賃金に係る合意の有無について検討するに,本件協定書においては,基本給8万5000円,乗務給1万3000円,皆精勤手当5000円及び超勤深夜手当(歩合割増含)5万0600円の合計15万3600円は,固定給である旨が記載され,定額の超勤深夜手当が固定給に含まれることとされている。」
 「そして,控訴人は,右超勤深夜手当は,労働基準法37条の時間外・深夜割増賃金であると主張するところ,文言上は,そのように解するのが自然であり,労使間で,時間外・深夜割増賃金を,定額として支給することに合意したものであれば,その合意は,定額である点で労働基準法37条の趣旨にそぐわないことは否定できないものの,直ちに無効と解すべきものではなく,通常の賃金部分と時間外・深夜割増賃金部分が明確に区別でき,通常の賃金部分から計算した時間外・深夜割増賃金との過不足額が計算できるのであれば,その不足分を使用者は支払えば足りると解する余地がある。」
 「しかしながら,被控訴人らは,本件協定等による賃金には,名目上は定額の超勤深夜手当を含むこととされているが,控訴人の賃金体系は,水揚額に対する歩合制であって,実質的に時間外・深夜割増賃金を含むものとはいえないと主張するところ,なるほど,名目的に定額の割増賃金を固定給に含ませる形の賃金体系がとられているにすぎない場合に,そのことのみをもって,前記のような時間外・深夜割増賃金の計算が可能であるとし,その部分について使用者が割増賃金の支払を免れるとすれば,労働基準法37条の趣旨を没却することとなる。したがって,右のような超勤深夜手当に係る定めは,実質的にも同条の時間外・深夜割増賃金を含める趣旨で合意されたことを要するというべきである。」
 最後の段落の判断内容は,よく認識しておく必要があると思います。判別可能性だけを考えて定額残業代の制度設計をすると,当該定額残業代は割増賃金としての実質を有しないと判断されかねません。
 北港観光バス(賃金減額)事件大阪地裁平成25年4月19日判決は,「ある手当が時間外労働に対する手当として基礎賃金から除外されるか否かは,名称の如何を問わず,実質的に判断されるべきであると解される。」とした上で,「無苦情・無事故手当及び職務手当は,実際に時間外業務を行ったか否かに関わらず支給されること,バス乗務を行った場合にのみ支給され,側乗業務,下車勤務を行った場合には支払われないことからすると,バス乗務という責任ある専門的な職務に従事することの対価として支給される手当であって,時間外労働の対価としての実質を有しないものと認めるのが相当である。」と結論付けています。バス乗務をした時だけ支給される手当であれば,実質的にはバス乗務の対価として払われる賃金であって,割増賃金の実質を有しないと認定されてしまいます。
 労基法37条5項,労基則21条各号に限定列挙された除外賃金に該当するかどうかは,名目ではなく実質で判断されることは周知の通りです。定額残業代は労基法37条5項,労基則21条各号に限定列挙された除外賃金には該当しませんが,割増賃金の実質を有する定額残業代は,割増賃金の算定基礎から除外されることになります。とすれば,定額残業代が割増賃金として認められるかどうかについても,実質的に判断すべきと考えるのが自然だと考えます。
 定額残業代の時間数の明示,清算合意(実態)等は定額残業代が除外賃金とされその支払が割増賃金の弁済として認められるために必須の「要件」ではなく,定額残業代が割増賃金の実質(時間外・休日・深夜労働の対価としての性格)を有しているかを判断する際に考慮する「要素」と考えるべきではないでしょうか。
 例えば,時間外割増賃金の時間単価が1500円の労働者の労働契約書に「定額時間外勤務手当として4万5000円支払う。」とだけ書いてあり,それが何時間の時間外労働の対価かは書かれておらず,差額支払の合意の記載もなかったとします。しかし,時間外割増賃金の時間単価が1500円の労働者であれば,4万5000円が30時間分の時間外割増賃金であり,30時間を超えて時間外労働を行えば追加で時間外割増賃金の支払を受けられることは明らかです。
 毎月,「時間外勤務手当」名目で4万5000円を払っていたとしても,何時間分の定額残業代かの明示がなく,差額清算の合意がなければ,時間外割増賃金の支払があったとは認められないのでしょうか。このような場合であっても,時間数を明示してもらわないと労働者が過不足を計算するのは大変だとか,不足が生じた場合は不足額を追加で支払う旨規定させないと事実上追加額の支払を受けられなくなりかねないといった懸念が生じ得ることは承知しています。しかし,「時間外勤務手当」のように時間外割増賃金の趣旨であることが明らかな名目で金額が明示されて支給され,客観的に割増賃金の過不足が計算できる定額残業代のすべてが定額残業代の支払として認められないという見解は取りにくいと考えます。
 もちろん,定額残業代が何時間分か,差額清算の合意や実態があるかといった事情を軽視しているわけではありません。これらは独立の「要件」ではなく,定額残業代が割増賃金の実質(時間外・休日・深夜労働の対価としての性格)を有しているかを判断するための重要な「要素」と考えているというに過ぎません。時間外割増賃金は,「時間外割増賃金の時間単価×時間外労働時間数」で計算されるのですから,想定される時間外労働時間数に対応した金額となっているか,想定される時間外労働時間数を超えたら差額が清算されているかは,当該定額残業代が時間外割増賃金としての実質を有するかを判断する上で重要な考慮要素だと考えます。
 定額残業代の時間数の明示,清算合意(実態)等を「要件」と考えるから,判断が硬直的になり,その法的根拠の説明に苦慮することになるのです。ちょうど,以前は整理解雇が認められるための「要件」(「整理解雇の四要件」)と考えられていたものが,解雇権濫用(労契法16条)の有無を判断する際に考慮する「要素」(「整理解雇の四要素」)と考えられるようになったのと同じように,定額残業代の時間数の明示,清算合意(実態)等を,定額残業代が割増賃金の実質(時間外・休日・深夜労働の対価としての性格)を有しているかを判断する際に考慮する「要素」と考えるべきだと思います。
 そして,原則的な計算方法との乖離の程度,比例関係切断の程度が小さい定額残業代であれば割増賃金の実質(時間外・休日・深夜労働の対価としての性格)を有していると認められやすく,乖離の程度,比例関係切断の程度が大きければ大きいほど,割増賃金の実質を有しているとは認められにくくなると考えています。

(2) 通常の労働時間・労働日の賃金に当たる部分と割増賃金に当たる部分とを判別することができること
 高知県観光事件最高裁判決やテックジャパン事件最高裁判決からすれば,通常の労働時間・労働日の賃金に当たる部分と割増賃金に当たる部分とを判別することができることは,定額残業代が除外賃金とされ,割増賃金の支払として認められるための最低限の要件といえると思います。この要件を満たさないようでは,(1)で述べた割増賃金の実質を有するとはいえないと考えることもできるかもしれません。実務上問題となるのは,何をもって判別可能性があるといえるかということです。
 ファニメディック事件東京地裁平成25年7月23日判決のように,「基本給に時間外労働手当が含まれると認められるためには,通常の労働時間の賃金に当たる部分と時間外及び深夜の割増賃金に当たる部分が判別出来ることが必要であるところ(最高裁平成6年6月13日第二小法廷判決,裁判集民事172号673頁参照),その趣旨は,時間外及び深夜の割増賃金に当たる部分が労基法所定の方法で計算した額を上回っているか否かについて,労働者が確認できるようにすることにあると解される。」と考えれば,割増賃金の過不足を「労働者」が確認できなければならないのですから,判別可能性が認められるためには厳格な要件を満たす必要があるという結論に傾きがちです。
 テックジャパン事件最高裁判決櫻井補足意見は,「このように,使用者が割増の残業手当を支払ったか否かは,罰則が適用されるか否かを判断する根拠となるものであるため,時間外労働の時間数及びそれに対して支払われた残業手当の額が明確に示されていることを法は要請しているといわなければならない。そのような法の規定を踏まえ,法廷意見が引用する最高裁平成6年6月13日判決は,通常の労働時間の賃金に当たる部分と時間外及び深夜の割増賃金に当たる部分とを判別し得ることが必要である旨を判示したものである。」「便宜的に毎月の給与の中にあらかじめ一定時間(例えば10時間分)の残業手当が算入されているものとして給与が支払われている事例もみられるが,その場合は,その旨が雇用契約上も明確にされていなければならないと同時に支給時に支給対象の時間外労働の時間数と残業手当の額が労働者に明示されていなければならないであろう。さらには10時間を超えて残業が行われた場合には当然その所定の支給日に別途上乗せして残業手当を支給する旨もあらかじめ明らかにされていなければならないと解すべきと思われる。」と述べています。
 しかし,ファニメディック事件判決や櫻井補足意見のように判別可能性の要件を厳格に考えなければならない理由はないのではないでしょうか。何時間分の定額残業代なのかとか,清算合意(実態)があるのかといった実質的な事情は,(1)の定額残業代が割増賃金の実質(時間外・休日・深夜労働の対価としての性格)を有しているかを検討するに当たって考慮すれば足りると考えます。
 ことぶき事件最高裁平成21年12月18日第二小法廷判決(裁判集民232号825頁,裁判所ウェブサイト,労判1000号5頁)においても,「管理監督者に該当する労働者の所定賃金が労働協約,就業規則その他によって一定額の深夜割増賃金を含める趣旨で定められていることが明らかな場合には,その額の限度では当該労働者が深夜割増賃金の支払を受けることを認める必要はない」とされており,深夜割増賃金の支払があったと認められるための「要件」として,深夜労働時間数の明示や差額清算の合意を要求していません。主戦場は「深夜割増賃金を含める趣旨で定められていることが明らかな場合」に該当するかどうかであって,判別可能性との関係では,「一定額の」というだけで十分と考えているように思われます。
 判別可能性との関係では,労基法37条の趣旨を医療法人一心会事件大阪地裁平成27年1月29日判決のように「労基法37条の趣旨は,割増賃金等を確実に使用者に支払わせることによって超過労働を制限することにある」と考え,「割増賃金部分が法定の額を下回っているか否かが具体的に後から計算によって確認できないような方法による賃金の支払方法は,同法同条に違反するものとして,無効と解するのが相当である。」と結論付けたり,「通常の労働時間の賃金に当たる部分から当該手当の額が労基法所定の時間外割増賃金の額を下回らないかどうかが判断し得ることが必要であると解される。」(泉レストラン事件東京地裁平成26年8月26日判決)という扱いにすれば十分と考えます。

(3) その他の検討事項
 定額残業代の名目が「時間外勤務手当」等,割増賃金であることを推認させるものであればいいのですが,「営業手当」等,その名目から割増賃金あるとは推認できないものについては,賃金規程に当該手当が割増賃金である旨明記して周知させたり,労働契約書にその旨明示して合意したりしておかなければ,定額残業代が割増賃金であると認めてもらえないのが通常です。
 中小企業などでは,定額残業代について「口頭」で説明したというだけで十分な客観的証拠が存在しない事例が散見されます。また,定額残業代について定めた賃金規程を労働者が確認できるようになっていない(周知させていない)事案も珍しくありません。これらの場合は,上記(1)や(2)の要件を検討するまでもなく,会社側の主張は門前払いとなってしまいます。
 労働協約で定額残業代を定めている場合は,組合員についてはその内容が労働契約の内容になります。労働協約で定めていれば個別合意などと比べて定額残業代と認められやすいかという論点があります。労使自治で決めたことですから,裁判所にも労使合意の内容を尊重して欲しいところですが,労基法37条は強行法規ですから,労基法37条に違反するような内容であればその効力は否定されざるを得ないと思います。

5 定額残業代(固定残業代)の適切な運用の検討
(1) 定額残業代を導入する目的の検討
 定額残業代の導入する前に,まず,「何のために定額残業代を導入するのか」を検討する必要があります。
 一般的に,定額残業代を導入すればいちいち残業代を計算する事務処理の手間を省くことができるかのようなことが言われることがあります。しかし,定額残業代を導入したところで労働時間の把握はしっかりしなければなりませんし,定額残業代で支払うべき割増賃金が足りてるのかどうかを毎月計算して確認しなければなりません。定額残業代を支払うだけでその過不足を確認せずに放置して追及を受けたら不足額を追加で支払えばいいや,というのなら楽かもしれませんが,真面目に過不足の確認をした場合,残業代計算の手間を省くという目的を達成することはできません。定額残業代を導入する目的として,残業代を計算する事務処理の手間を省くことができることを期待できる場面は,限定的なのではないかと思います。
 「残業すれば残業代がもらえて給料が増える仕組みだから,労働者に対し残業するモチベーションを与えることになってしまっている。定額残業代を導入して,残業しても現実に支払われる残業代が増えない仕組みにすれば,残業を抑制することができる。」という考えが存在します。確かに,定額残業代の導入により無駄な残業をする労働者が減った職場もあるようですが,必ずしも良い結果につながるとはいえません。残業させるかどうかを決めるのは使用者の権限なのですから,残業時間を抑制したければ残業させずに帰せば足りるはずです。定額残業代を導入する目的として,残業抑制を強調することは適切でないと思います。
 残業時間の長さにかかわらず一定額の残業代を保証することにより労働者の賃金額を魅力あるものとし,労働者を惹きつけることで労働力を確保するという目的で定額残業代が導入されることがあります。「基本給20万円で,残業時間に応じて1分単位で残業代を支払う」という労働条件と「基本給20万円と定額残業代5万円の合計25万円は残業の有無・長さにかかわらず保証し,残業代の額が5万円を超えた場合は不足額を追加で支払う」という労働条件が提示された場合,労働者にとってどちらが魅力的でしょうか。残業の有無・長さにかかわらず5万円の定額残業代が保証される分,後者のほうが魅力的だと思います。後者の労働条件の労働者に関し定額残業代を廃止し,基本給20万円だけが保証されることとし,現実の残業時間に応じて1分単位で残業代を支給することにした場合,当該労働者にとっては労働条件の不利益変更となります。定額残業代をけしからんと言っている人でも,定額残業代を廃止するにあたり,単に定額残業代5万円をなくして基本給20万円を基礎賃金として実労働時間に応じて1分単位で残業代を支払えとは言ってきません。定額残業代相当額5万円を基本給20万円に加算して,基本給を25万に増額してくれと要求してくるケースがほとんどです。
 求人・採用に当たり,使用者が労働者に対して十分な説明を行い,納得した上で求人に応募した労働者が就職を決めたのであれば,一概に定額残業代が問題であるとはいえないと思います。しかし,求人情報の内容とその後合意された労働契約書等に記載された労働条件が相違する場合,原則として労働契約書等に記載された労働条件が労働契約の内容となることを悪用し,定額残業代込みで25万円なのに,基本給等の残業代以外の賃金が25万円と受け取られかねない求人情報を出して人を集める会社が出てきたら,どうなってしまうでしょうか。労働者が安心して就職活動ができなくなってしまうことは明らかです。
 こうしたトラブルを防止するため,厚労省は平成26年4月14日付けで「求人票における固定残業代等の適切な記入の徹底について」という文書を出し,求人票に定額残業代に関し不適切な記載がなされないよう注意を促しています。
 また,「青少年の雇用機会の確保及び職場への定着に関して事業主,職業紹介事業者等その他の関係者が適切に対処するための指針」(平成二十七年厚生労働省告示第四百六号)においても,「募集に当たって遵守すべき事項」の一つとして,固定残業代に関し,「青少年が応募する可能性のある募集又は求人について,一定時間分の時間外労働,休日労働及び深夜労働に対する割増賃金を定額で支払うこととする労働契約を締結する仕組みを採用する場合は,名称のいかんにかかわらず,一定時間分の時間外労働,休日労働及び深夜労働に対して定額で支払われる割増賃金(以下このヘにおいて「固定残業代」という。)に係る計算方法(固定残業代の算定の基礎として設定する労働時間数(以下このヘにおいて「固定残業時間」という。)及び金額を明らかにするものに限る。),固定残業代を除外した基本給の額,固定残業時間を超える時間外労働,休日労働及び深夜労働分についての割増賃金を追加で支払うこと等を明示すること。」と規定しています。
 公益法人全国求人情報協会は,加盟している企業に対し,①固定残業代の額,②その金額に充当する労働時間数,③固定残業代を超える労働を行った場合は追加支給する旨の記載を要請しています。
 平成28年6月3日付けで「雇用仲介事業等の在り方に関する検討会報告書」が公表され,厚生労働省のウェブサイトにアップされています。同報告書の「求人に際して明示される労働条件等の適正化」の項目において,「労働条件等明示等のルールについて,固定残業代の明示等指針の充実,虚偽の条件を職業紹介事業者等に対し呈示した求人者に係る罰則の整備など,必要な強化を図ることが適当である。」と述べられています。
 残業時間の長さにかかわらず一定額の残業代を保証することにより労働者の賃金額を魅力あるものとし,労働者を惹きつけることで労働力を確保するという目的で定額残業代をすることが問題というわけではないと考えます。ただ,現在,求人の場面における定額残業代に関するトラブル防止が重要な課題となっていますので,この点に対する十分な配慮が必要であることに留意する必要があります。

(2) 時間外・休日・深夜労働時間数の実態調査
 定額残業代を導入する目的を検討した結果,定額残業代の導入が決まった場合,時間外・休日・深夜労働時間数の実態調査を行います。時間外・休日・深夜労働時間数の実態と定額残業代の時間数のかい離が大きいと,定額残業代が割増賃金の実質を有するかという論点において,これを否定する方向に働く一要素となります。他方,実態調査を行い,その結果に基づいて定額残業代の時間数を設定した場合,時間外・休日・深夜労働時間数に応じて金額が定まるという割増賃金の性質に合致しますので,割増賃金の実質を有すると判断されやすい方向に作用します。

(3) 定額残業代として支払う時間外・休日・深夜労働時間数の決定
 実態調査が終わったら,調査結果に基いて定額残業代として支払う時間外・休日・深夜労働時間数を決定します。
 定額残業代の時間数の設定に関し,「何時間分の定額残業代までなら安全ですか。」という質問を受けることがあります。裁判例の中には限度基準を参照して,1か月45時間を基準にしているかのようなものも見受けられますが,理論的には何時間分の定額残業代までなら安全といえる基準は存在しません。
 時間外・休日・深夜割増賃金は,原則として,時間外・休日・深夜労働時間数に比例して支払われることが想定されているのに対し,定額残業代を導入した場合,定額残業代額に達するまでは,現実に支払われる割増賃金額と時間外・休日・深夜労働時間数との間の比例関係が切断され,支払われるべき割増賃金額が定額残業代額を超えた時点で比例関係が復活することになります。定額残業代が割増賃金の実質を有するかは,原則的な計算方法との乖離の程度,比例関係切断の程度が大きく影響してきます。原則的な計算方法との乖離の程度,比例関係切断の程度が小さい定額残業代であれば割増賃金の支払として認められやすいですが,乖離の程度,比例関係切断の程度が大きければ大きいほど,割増賃金の支払とは認められにくくなります。定額残業代の時間数が長時間になればなるほど,原則的な計算方法との乖離の程度,比例関係切断の程度が大きくなりますので,割増賃金の実質を有しないと判断されるリスクが次第に高まっていくことになります。

(4) 定額残業代として支払う金額の計算
 定額残業代として支払う時間外・休日・深夜労働時間数を決定したら,定額残業代として支払う金額を計算します。
 仮に,時間外割増賃金の時間単価が1937円の労働者に関し,30時間分の時間外割増賃金を定額残業代とするのであれば,1937円×30時間=5万8110円を「時間外勤務手当」等の名目で定額残業代として支給します。
 上記事例では,定額残業代の金額に端数が生じていますが,敢えて,端数を残したままの定額残業代とすることが多いです。なぜなら,労基法・労基法施行規則に基づいて計算した時間外割増賃金の時間単価に,実態調査を踏まえて決定した時間外労働時間数を乗じて計算した金額に1円単位まで一致している「時間外勤務手当」であれば,時間外割増賃金の実質を有していると推認できるからです。計算式を示すなどすれば,端数処理して切りのいい金額にしたら直ちにダメというわけではないのですが,端数を残したままの定額残業代の方が時間外割増賃金の実質を有していることの立証がしやすいことは明らかです。
 このような定額残業代の設定方法とは逆に,まずは定額残業代の金額を決めてから,何時間分の割増賃金に相当するのかを後から計算して,時間数を明示するやり方がよく見られます。例えば,時間外割増賃金の時間単価が1937円の労働者に関し,定額残業代の金額を6万円に決めてから時間単価の1937円で除し,6万円が約30.98時間分の時間外割増賃金相当額であることを確認します。そして,6万円の定額残業代を「労働者に有利に」30時間分の定額残業代である旨,明記するわけです。このやり方は,直ちに労基法37条に違反するとはいえないかもしれませんが,いかにも「残業代請求対策」を行っているように見えがちです。また,定額残業代の金額が,時間外割増賃金の時間単価に想定される時間外労働時間を乗じた金額と一致しませんから,時間外割増賃金の実質を有しないと認められやすくなる方向に作用することになります。このように,定額残業代を切りの良い金額とする場合は,最低限,計算式を明示する等して,あくまでも時間外割増賃金の時間単価に想定される時間外労働時間を乗じて計算したものの端数を調整したに過ぎないことが客観的証拠から分かるようにしておくことをお勧めします。

(5) 就業規則(賃金規程)の整備
 実施しようとする定額残業代の内容が確定したら,定額残業代導入の経緯や決定した事項を反映する就業規則(賃金規程)を整備します。定額残業代で不足がある場合に不足額を追加で支払うのは当然のことですから,定額残業代が割増賃金の実質を有することを明らかにするためにも,就業 規則にもその旨,明記するようにして下さい。
 就業規則変更の際の労働者代表の選出方法に瑕疵があったり,就業規則の周知がなされていなかったりする事例が散見されます。特に,就業規則の周知を欠いている場合は,就業規則の規定を根拠として定額残業代の支払により割増賃金の支払がなされたとは認められなくなることには注意が必要です。

(6) 求人情報,労働条件通知書,給与明細書における定額残業代の明示
 求人情報,労働条件通知書には,定額残業代の金額,時間数,不足額がある場合には不足額を追加で支払うことなどを可能な範囲で記載します。
 給与明細書には,「時間外勤務手当」等,名称自体から時間外・休日・深夜割増賃金の支払であることが推認できる名称で,定額残業代の金額が明確に分かる形で定額残業代を記載します。時間外・休日・深夜労働時間数も明記し,定額残業代で不足額がある場合には不足額についても金額を明示して記載します。

(7) 不足額の清算
 定額残業代で不足額がある場合には,定額残業代が割増賃金の実質を有することを明らかにするためにも,不足額について忘れずに支給して下さい。

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